それから

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瑛人のアルバム「すっからかん」を聴いたら凄かった

2021年最初に聴いたアルバムは瑛人の「すっからかん」でした。年末の歌番組で彼が「香水」を歌う姿を見て、歌詞にあるようにまさに「今更」なぜか興味を持った流れでアルバムをダウンロード。聴いてみると彼のそのストーリーテラーっぷりに驚いてしまったのです。


「香水」を聴いていた時から引っかかっていたのだけど、彼の書く歌詞というのは歌詞というより物語に近いなと思わせる何かがある。こういう人物がいて、こういうできごとがあって、こういう感情の流れがあって、今こういう状態になっている、みたいな一連の時の流れがあるというか。そういうのって他のミュージシャンの歌詞でも散見される手法だと思うんだけど、この人ほど自然にいってる感じがしないというか(鳴呼語彙力)。しかも瑛人の場合、物語を紡ぐという具体的なことをやってのけながらも行間を読ませるということまでできている!


例えば大ヒットした「香水」の場合、「僕」が“クズ”になった理由は「君」と何かしら関連しているんだろうなと思わせつつも、本当のところはわからない。あくまで「そうなんだろうな」とこちら側に想像させるところまでにとどまらせて、だけど「ドルチェ&ガッバーナ」という固有名詞を出すことで物語は立体的になっている。天才か。たぶん天才や。


さらにTrack.3の「ハッピーになれよ」という曲では、アル中らしき父親に家庭内暴力を振るわれている母親&三兄弟が家を出ていく様をおよそ似つかわしくない明るいレゲエ調で歌い上げるという荒技を披露(超褒めてる)。三人兄弟の家を出ていく際の反応がそれぞれ違ってまさに小説的。そして家を出ていった2年後に三男が一人で父親の元を訪れるシーンがさらに哀愁と余韻が半端なく小説的。直木賞作家の短編小説にあってもおかしくないクオリティ。


その他、Track.1の「僕はバカ」では、アパートの隣人の女の子に恋してる男の子の心情がギリギリ気持ち悪くないところを踏みとどまって描かれていて、何とも言えず気持ちがざわつくし、Track.6の「リットン」では途中で「あなた」が祖母(もしくは祖父?)だとわかる構成が巧みで不意をつかれて泣きそうになった。


「香水」があまりにも大ヒットしたから一発屋になるんじゃないかと思われがちな人だけど(ていうか一発当てるだけですごいんだが)、この人はたぶん天才なんじゃないかと思っている。「すっからかん」、しばらく繰り返し聴くことになりそうだ。