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究極の不潔な恋愛映画――「彼女がその名を知らない鳥たち」

彼女がその名を知らない鳥たち

彼女がその名を知らない鳥たち

  • 発売日: 2018/04/25
  • メディア: Prime Video

あらすじ(「ぴあ映画生活」より引用)
8年前に別れた男・黒崎を忘れられない十和子は、15歳年上の貧相な男・陣治の稼ぎで働くこともなく生きていた。ある日、黒崎を思い出させる妻子持ちの水島と関係を持つ。刑事から黒崎が行方不明だと知らされた十和子は、陣治の仕業ではないかと疑い始める。

エンディングに近づくにつれてボロボロ涙がこぼれて止まらなかった。
良い映画、と言ってしまうとなんだか言葉がそぐわないのだけど、良い映画だと思う。


あんまり内容を描いてしまうとネタバレになってしまうので難しい。
だからなんで自分はこんなにも泣いたんかなと考えてみたのだけど、たぶん、陣治(阿部サダヲ)の十和子(蒼井優)への愛が、自分の理想とするものだったからだ。


陣治はことあるごとに「俺は君(十和子)が笑ってくれてさえいればいいんだよ」と言う。
自分の理想の愛ってそういうことなんだよな。
性欲とか、自分のためではなく相手の幸せだけを純粋に願う気持ち。


陣治以外の十和子と関係する男たちはみんな、まず先に自分の欲望を満たしたい思いがあって、その思いの先にいる十和子しか見ていない。水島(松坂桃李)なんてとてもわかりやすくそれを表現していて、十和子に会ったらまずホテルに行こうとする。
綺麗な身なりと言葉で十和子を魅了しているように見えて、男たちの心の中は不潔なのだ。そして外見は一番不潔な陣治の心の中は一番綺麗だ。


あとで振り返ってみるととてもわかりやすい演出だったんだな。
人間という生き物は多くの者が見た目が美しいものに惹かれてしまうという普遍的な悲しい性を持っていて、それを陣治という不潔な登場人物で破壊しようと試みている良い映画だった。


それにしても蒼井優ってなんかすごく美人にも見えたりブス(失礼)にも見えたり、本当に顔の「ゆらぎ」みたいなものが絶妙な女優さんで、つくづく良い役者だなあと感じました。阿部サダヲの不潔具合と愛らしさ(ここポイント)もすごく良かった。


最後に二人で食べてたステーキ、美味しそうだったな。
山場とかクライマックスとかより何気ないシーンの方が思い出すと泣きそうになってしまう、稀有な映画かもしれない。